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第20部「見捨てる事も手段」

20部 見捨てる事も手段





道路  川道   12時18分
川道は両耳を塞ぎながら歩いていた。
「うっさかったぁ・・・・」
『まだ耳ん中キーンってするょ・・・』
先の爆音で耳鳴りが止まらなくなっている様だ。
「・・・・・ん?」
すると少し先に人が倒れていた。
「・・・・!」
川道は躊躇い無くそれに近付く。
「おぃ・・・ぉいっ!!」
それは命からがら室内プールから逃げ出した新野だった。
「新野ツっ!!おいっ!!」
身体を揺する。
「・・・・ゲホォッ!!」
新野は大きく咳きをする。
ゆっくりと目が開く。
「・・・バッチ・・・」
「ォイッ!新野!大丈夫か!?ど、どうしたんだ!!」
「今・・・中でガスを吸っちゃったんだ・・・」
「・・・ほ、ほら!いっぱい空気吸ぇ!ぅすれば大丈夫だから!」
それから2人は口が閉じた。
「・・・」
無言で新野の背中を摩る川道。
「・・・スー・・・ハー・・・スー」
大きく呼吸をくり返す新野。
2人共怖かった。

This feeling is what. Anger?Anger, sadness, or joy ..... It is slaughter・・・?

川岸  吉賀・久井・亀横   12時41分
「・・・・・」
川が半分無くなっていた。
沈んだんだろう。
川が直接海と繋がってしまっている。
沈むのを目の前で見たらしい。
3人共喋らずに唖然としている。
「すごかった・・・・け、けど怖かった・・・」
「なぁーんも無くなっちゃったね・・・」
すると
「もう行こうょ?てかここって次のデッドゾーンでしょ?早く行かないと」
亀横がたちあがって言う。
「そぅだね・・・・行こ」
吉賀も立ち上がり笑う。
亀横は久井の手を引っ張り立たせてやる。
「・・・ぅよいしょ、・・・・さぁて、行きますか」
3人は上流へ向かって歩こうとした。
隣の林だろうか、木の上から何かが飛んだ。
それは川岸へと着地した。
【ガチャァァッ!!】
足下の砂利が音を起てて跳ねる。
「!!」
「走って!!」
亀横は2人に言って走る。
「・・・・・」
そいつは手にボーガンを持っていた。
顔も身体もボーガンも血まみれだった。
『一緒に行ってくれるかも』
亀横にそんな気持ちはもう無かった、失せていた。
相手がどんなやつでも一緒に行ってくれるやつでも殺すやつでもーーー
『逃げる』
それだけしか考え付かなかった。
『だって一緒に行ってくれる人なら逃げたら声掛けてくれるじゃん?』
・・・・・正解だった。
そいつもすぐに走り出した。
ボーガンを両手で抱え、走ってくる。
ーーーーーー逃げられない!?
そうだった。
3人の走力では逃げ切れない程の足の速さだった。
『戦うしか・・・・無い?』

亀横は止まろうとした。
武器は無かったけど・・・
ところが
【ドシャァァァー!!】
後方で大きな音がした。
亀横は少しスピードを落とし、後ろを振り返る。
・・・そこでは、吉賀が転んだのか、倒れていた。
「麻奈美っ!!」
亀横は止まって戻ろうとした。
しかし、そいつの勢いは止まらなかった。
【バスッバスッバスッ!!】
ボーガンの矢が倒れた吉賀の身体にめり込む。
続けて吉賀の腰辺りを足で踏む
・・・その後はボーガンの矢の雨だった。

亀横は、久井の手を掴み一度うなずき走りだす。
「麻奈ちゃんがぁー!!」
叫ぶ久井を他所に亀横は走る、吉賀は助からないから。

走った。

何分ぐらいだろうか?

途中花畑もあった。

関係無く走った。

久井が亀横の手を振り解く。
「どうしてあそこで止まってくれなかったの!?なんでうちの手まで引っ張って行ったの!?麻奈ちゃんは?麻奈ちゃんはどうするの!?」
「・・・・助からなかったょ・・・」
「そんなの分かんないじゃん!?」
「分かんじゃん!三回も撃たれてたじゃん!?あれで私達も戻ってたら二の舞じゃん・・・」
「・・・・・っ!」
久井はその場に崩れ落ちる。
「ご、ゴメン・・・ああするのが1番良いと思ったの・・・」
「・・・ぅん、ごめん。しょうがなかったょね・・・」
亀横も力が抜けた様にその場に座る。


【バスッバスッバスッバスッバスッ・・・・】
一体何発撃ったんだろぅ・・・か?
吉賀の身体や顔は、もう原形を留めていなかった。
そいつは屍体から矢を抜きボーガンに戻す、これで矢は無くならない。
「・・・ちぃっ、こいつがコケたからつい止まっちまった・・・」
『うちが・・・・何2人も逃がしてんだょ・・・』
「・・・・2度は無ぇと思うんだな・・」
小さな声で呟いた。
川で手と矢を洗い、一息吐いてから上流へ向かい走り出した。

本部近く  牧屋・ガキ   12時44分
2人共座っていた。
「・・・・ぉぃガキ」
「・・・・」
ガキはしゃべらない。
団地で会った時から一度もしゃべらない・・・・
だから名前も、なぜここにいるのかも分からない。
「・・・・あぁぁ!?もぅ否だぜ、ガキ!俺は行くかんな!」
「・・・!」
牧屋は立ち上がって言う。
するとガキも立ち上がる。
「もぅ憑いてくんなょ?しゃべんねぇ無愛想なガキァ嫌いだ」
「・・・!!」
ガキはびっくりした顔をする。
「秋長もいねぇし、俺は行くぜ。てか何で俺んとこいんだぁ?お前ぇがしゃべんねぇなら俺はお前を置いてどっか行っかんな、じゃな」
牧屋は歩き出す。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・せ・・・き、や・・・」
ガキの小声に牧屋は止まる。
「・・・何ぃ?」
「・・・せ、せきやぁ!」
「せきや?なんだそりゃぁ?」
「・・・名前・・・俺の・・」
「・・・・ほぅ」
牧屋は素直にガキへと近付く。
「お前"せきや"っつうのか?」
「・・・赤也(せきや)・・・幻分(げんぶ)」
「ホォ・・・めずい名前だな・・・まぁ、よく喋ったな」
「・・・・」
「ょし、そのまんま喋れょ。いくつか質問するぞ?」
「・・・・」
「へぇーんじは?」
「・・・ぉぅ」
「まぁ良いゃ、ひとぉーつ、お前はなぜここの島にいる?」
「・・・家」
「あの団地か?」
「ぁぁ、あそこでお父さんとお母さんといた」
「なんで父母はいねぇんだぁ?」
「待ってろって・・・・押し入れで待ってろって言われた」
「ほぉ・・・で、母親はどこ行ッたんだ?」
「・・・知らない、俺押し入れに入れて、風邪薬飲まされて・・・そしたら眠くなって・・・起きたら、お前がいた」
「お前って・・・wんん、まぁ分かった、これからどうす・・・・ん?」
背後の空気が淀んだ・・・淀んだ気がしやがった・・・

SHIT!! It is in the middle of the talk!





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